資金繰り管理は、企業にとって利益の確保と同じくらい重要です。損益計算書上は黒字であっても、手元に現金が足りず支払いができない「黒字倒産」が発生することがあり、これは資金繰りを軽視した結果です。例えば、ある企業が大口の取引先に商品を納品し売上を計上したとしますが、入金までに数か月かかる場合、次の支払日に必要な現金が手元にないことが考えられます。このような状況は、経理担当者にとっても大きなリスクであり、日々の資金繰り管理が不可欠です。
資金繰りとキャッシュフローは似ているようで異なり、役割も異なります。キャッシュフローは主に過去の収支を把握するために用いられる一方、資金繰りは将来の支払い予定と収入予測を元に、必要なタイミングで資金が足りるよう計画するプロセスです。黒字倒産を防ぐには、毎月の支払いや入金のタイミングを把握し、支払いの前に資金が十分に確保されているか確認することが重要です。例えば、毎月末に給与の支払いがある場合、それまでに確実な現金収入が必要です。また、万が一入金が遅れる際には、金融機関の融資など他の手段で資金を調達する方法も検討しておくと良いでしょう。
資金繰り管理を行う際の重要なツールの一つに「資金繰り表」があります。資金繰り表は、経理担当者が支出と収入をタイミングごとに管理し、次にどれだけ資金が不足するかを予測するために非常に役立ちます。例えば、売掛金の入金が月末に集中する企業であれば、入金予定日と支払予定日をあらかじめ把握し、どのタイミングで資金が不足しやすいかを明確にできます。また、万が一資金不足のリスクが見えた際には、取引先に入金を早めてもらう交渉をする、または支払いを一部延期してもらうなど、事前に対策を取ることが可能です。このような細かい調整ができるのも、資金繰り表の有効な点です。
さらに、会社に眠っている資産や在庫を活用することも、資金繰りを改善するための方法の一つです。例えば、売れ残りの在庫がある場合、それを早めに処分して現金化することで、手元資金を増やすことができます。特に、売却できない資産や使われていない設備を抱え続けるよりも、資金繰りに役立つ現金として活用することで、黒字倒産を避けるための余裕が生まれます。